2026年8月29日

自賠責保険がおりないと判断される3つの要件

 交通事故の被害に遭ったとき、加害者側の自賠責保険から補償を受けられるのが原則です。しかし、例外的に「自賠責はおりない」と判断される場合があります。その根拠となるのが、自動車損害賠償保障法第3条ただし書に定められた免責3要件です。

前提となる運行供用者責任

 自賠法3条は、自己のために自動車を運行の用に供する者(運行供用者)が、その運行によって他人の生命または身体を害したときは損害賠償責任を負う、と定めています。対象は人身損害に限られ、物損は自賠責の対象外です。この賠償責任が成立することを前提に、自賠責保険から保険金が支払われる仕組みになっています。

免責が認められる3つの要件

 第一に、自己および運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったことです。条文は運転者だけでなく、運行供用者本人の管理・監督上の注意も対象としています。速度、前方注視、安全確認といった通常求められる注意義務が尽くされていたかが、事故態様の全体から判断されます。

 第二に、被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったことです。事故の原因が被害者自身の行為、あるいは運転者と無関係な第三者の行為にある場合が、これに該当します。被害者が突然車道に飛び出したケースなどが典型例として挙げられます。

 第三に、自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったことです。ブレーキやハンドルなど、装置の欠陥や作動不良がないことを指します。車検に合格していれば当然にこの要件が認められる、というものではありません。日常の点検では発見が難しい欠陥であっても、免責は認められにくいと考えられています。

「満たす」ではなく「証明する」

 ここで重要なのは、3つの要件を客観的に満たしていれば足りるのではなく、運行供用者の側がこれらをすべて証明しなければならないという点です。通常の不法行為(民法709条)では被害者が加害者の過失を立証しますが、自賠法3条は立証責任を加害者側に転換しています。3要件をそろえて立証することは実際には極めて難しく、運行供用者責任は「実質的無過失責任」とも呼ばれています。裏を返せば、被害者側で加害者の過失を細かく立証しなくても、補償を受けられる可能性が高いということです。

1つでも欠ければ支払対象となる

 3つの要件は、1つでも立証できなければ免責は成立しません。裏を返せば、3つすべてが証明された場合に限って自賠責はおりず、それ以外の場合は支払対象となる可能性が残ります。被害者にとっては保護の厚い仕組みといえます。

 なお、免責が認められない場合でも、被害者に7割以上の過失があるときは重過失減額が行われます。傷害部分は2割、後遺障害・死亡部分は過失割合に応じて2割から5割の減額です。また、免責3要件とは別に、負傷した方が自賠法上の「他人」に当たらない場合も支払対象外となります。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としています。内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。