建設業でいう「赤伝処理」とは
建設業の実務で用いられる赤伝処理とは、元請負人が下請代金を支払う際に、一定の諸費用を差し引く(相殺する)行為をいいます。国土交通省の建設業法令遵守ガイドラインでは、その例として、一方的に提供・貸与した安全衛生保護具等の費用、下請代金の支払に関して発生する諸費用(振込手数料など)、下請工事の施工に伴い副次的に発生する建設副産物の運搬処理費用、駐車場代・弁当ごみ等のごみ処理費用・安全協力会費といったその他の諸費用が挙げられています。関係する条文は建設業法第18条、第19条、第19条の3第1項、第20条第3項とされており、元請下請間の取引適正化における主要な論点のひとつに位置づけられています。
会計処理の「赤伝」とは意味が異なる
一般の会計実務では、請求や売上計上の誤りをマイナス伝票や逆仕訳で打ち消す処理を「赤伝」と呼ぶことがあります。ただし、会計上の赤伝と、建設業法上の赤伝処理は別の概念です。前者は帳簿の正確性を保つための記帳方法であるのに対し、後者は下請代金からの費用差引きという取引行為そのものを指します。建設業の文脈で「赤伝処理」といえば、通常は後者を意味します。社内の経理担当者と現場・契約担当者との間で用語の理解がずれると、行政庁への説明や下請負人との協議の場面で認識の食い違いが生じやすいため、使い分けを意識しておくことが求められます。
赤伝処理そのものは直ちに違法ではない
ガイドラインでは、赤伝処理を行うこと自体が直ちに建設業法上の問題となるものではないとされています。もっとも、赤伝処理を行うためには、その内容や差し引く根拠について元請負人と下請負人双方の協議・合意が必要であるとされています。さらに、安全衛生保護具等の費用や建設副産物の処理費用などを差し引く場合には、その内容や差引額の算定根拠を見積条件および契約書面に明示する必要があり、見積条件に示さなかった場合は建設業法第20条第3項に、契約書面に記載しなかった場合は同法第19条に違反するとされています。
違反となるおそれがある行為の例
合意のないまま一方的に諸費用を差し引く行為のほか、建設副産物が発生しない工事の下請負人から処理費用の名目で一定額を差し引く場合、根拠が不明確な販売促進名目の協力費を差し引く場合、駐車場や宿舎の使用料として実費より過大な金額を差し引く場合などが、建設業法第19条の3第1項に違反するおそれがある行為として示されています。差引きの結果、下請代金が当該工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額となる場合も同様で、情状によっては同法第28条第1項第2号の請負契約に関する不誠実な行為に該当するおそれがあるとされています。
実務で押さえておきたい対応
トラブルを避けるには、差引額の算出根拠や使途を明らかにしたうえで事前に十分な協議を行い、合意した内容を書面で残しておくことが有効です。ガイドラインでは、安全協力費について工事完成後に収支を下請負人へ開示するなど透明性の確保に努めることや、駐車場代など書面化義務の対象とならない費用についても後日の紛争を避ける観点から書面で取り交わしておくことが望ましいとされています。なお振込手数料については、振興基準において合意の有無にかかわらず中小受託事業者に負担させて代金から差し引いてはならないとされている点にも留意が必要です。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としています。内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。