交通事故に遭った直後の被害者は、治療・仕事・保険会社への対応が一度に重なり、大きな負担を抱えます。その負担を軽くしようと、整骨院が患者に代わって自賠責保険の被害者請求を手伝っている例を見かけますが、関わり方によっては行政書士法に抵触するおそれがあります。
被害者請求とはどのような手続か
被害者請求は、自動車損害賠償保障法第十六条第一項に基づき、被害者が加害者側の自賠責保険会社へ直接保険金を請求できる制度です。支払請求書、事故発生状況報告書、診断書、施術証明書・施術費明細書、休業損害証明書などを整えて提出します。これらは単なる事務書類ではなく、支払われる金額や支払いの可否に直結する、権利義務に関する書類です。
書類の作成が問題となる理由
行政書士法第一条の二は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類や権利義務・事実証明に関する書類を作成することを行政書士の業務と定め、同法第十九条第一項は、資格のない者がこれを業として行うことを禁じています。被害者請求の書類は、まさに権利義務に関する書類にあたります。患者の依頼を受けて請求書類一式を作成し、記載内容を判断・補正することを反復継続していれば、無資格での書類作成業務と評価される可能性があります。違反には一年以下の拘禁刑または百万円以下の罰金が定められています。
「無償なら問題ない」とは限りません
行政書士法が規制するのは、報酬を得て業として行う場合です。そのため、真に無償であれば直ちに違反となるわけではありません。ただし、請求書類の作成費用を明示していなくても、施術費や患者サービスの中に実質的な対価性が認められる場合には、報酬を得ていると評価されることがあります。善意かどうかは判断の決め手にならず、業として反復継続しているかどうかが重要です。
書類作成と示談交渉では論点が異なります
整理すると、書類の作成は行政書士法の問題、保険会社との交渉や被害者の代理は弁護士法第七十二条の問題であり、根拠となる法律が分かれます。なお、示談交渉の代理は弁護士の業務であり、行政書士が行うことはできません。
整骨院ができること・慎重になるべきこと
施術そのもの、自院が行った施術についての施術証明書や施術費明細書の作成、患者本人への一般的な制度の説明は、整骨院が行える範囲です。一方で、被害者請求書類一式の作成、請求内容の判断や整理、患者に代わっての請求対応は、慎重に線を引くべき行為といえます。
適切な役割分担が双方を守ります
治療と施術は医療機関・整骨院が担い、法的な書類の作成は資格を持つ専門家が担う。この役割分担が、患者にとっても整骨院にとっても最も安全です。適法な範囲で正確な書類が整えば、後日のトラブルに発展する芽を小さくできます。
被害者請求の書類作成についてご不安のある整骨院の先生方、また交通事故の被害に遭われたご本人からのご相談をお受けしています。当事務所では自賠責保険の被害者請求に必要な書類の作成と整理をお手伝いしますが、保険会社との示談交渉の代理は弁護士の業務となるため、行政書士はお引き受けできません。愛知・岐阜・三重を中心に対応しており、初回のご相談は無料です。このページ内のお問い合わせフォームより、お気軽にご連絡ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。