「設備投資を検討しているが、費用が心配…」という事業者の方に、ぜひ知っておいていただきたい制度がものづくり補助金です。正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といい、中小企業や小規模事業者が革新的な新製品・新サービスの開発や生産性向上のための設備投資を行う際に、その経費の一部を国が補助してくれる制度です。今回は、この補助金のポイントをわかりやすく整理しました。
■ ものづくり補助金の基本的な内容
ものづくり補助金には、現在大きく2つの申請枠が設けられています。
まず、国内での革新的な新製品・新サービス開発を対象とした「製品・サービス高付加価値化枠」です。補助上限額は従業員数に応じて750万円〜2,500万円、補助率は中小企業が1/2、小規模事業者・再生事業者は2/3となっています。
次に、海外展開によって国内の生産性向上を図る事業を対象とした「グローバル枠」です。補助上限額は従業員数にかかわらず3,000万円、補助率は製品・サービス高付加価値化枠と同様です。
なお、大幅な賃上げに取り組む事業者については、補助上限額が最大1,000万円上乗せされる「大幅賃上げ特例」も設けられています(特例の要件を達成できない場合は補助金の返還義務が生じます)。
■ 採択のカギ①「新規性・革新性」
ものづくり補助金では、単なる設備の入れ替えや、他社ですでに普及している取り組みは対象外とされています。「革新的な新製品・新サービスの開発」であることが申請の前提です。
重要なのは、「自社にとって新しい」だけでなく、市場や業界においても新しい付加価値を生み出す取り組みであることが求められる点です。事業計画を作成する際には、「なぜこの取り組みが革新的といえるのか」を数字とストーリーで明確に示すことが採択率を左右します。
■ 採択のカギ②「賃上げ要件」
ものづくり補助金には、補助事業終了後の事業計画(3〜5年)において達成すべき基本要件が設定されており、賃上げに関する要件もその一つです。最新の第23次公募では、従業員1人あたり給与支給総額を年平均成長率3.5%以上増加させることが必須要件とされています。単に従業員数を増やして総額を膨らませるだけでは要件を満たせず、従業員一人ひとりの給与を実際に引き上げることが求められます。
万が一、設定した目標を達成できなかった場合は、未達成の程度に応じて補助金の返還義務が生じます。また、補助事業完了後も5年間にわたり毎年の賃上げ達成状況を報告する義務があります。「補助金をもらえたら終わり」ではなく、その後の継続的な経営改善まで視野に入れた計画づくりが重要です。
■ 事前に準備しておくべきこと
ものづくり補助金の申請には、以下の事前準備が欠かせません。
まず、GビズIDプライムの取得です。電子申請に必要なアカウントで、取得までに2〜3週間程度かかる場合があります。公募開始後に慌てることのないよう、早めに手続きを進めておくことが重要です。
次に、事業計画の整理です。「どのような革新的な取り組みを行うのか」「それによって付加価値はどう向上するのか」「賃上げ目標はどう達成するのか」を、具体的な数字とストーリーで組み立てることが採択のポイントになります。なお、一定額以上の申請者にはオンラインでの口頭審査が実施されるため、経営者自身が事業内容をしっかり説明できることも大切です。
■ まとめ
ものづくり補助金は、設備投資の経済的リスクを抑えながら、中小企業の新しい挑戦を力強く後押しする制度です。ただし、採択率は近年30〜40%台で推移しており、準備の質が結果を大きく左右します。「新規性・革新性」と「1人あたり年率3.5%以上の賃上げを含む事業計画」の2点を軸に、しっかりと準備を進めることが採択への近道です。
申請をご検討の方、事業計画の整理に不安のある方は、ぜひ行政書士吉田哲朗事務所までお気軽にご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。