2026年6月26日

公正証書遺言と自筆証書遺言(法務局保管制度)の違いを徹底比較

どちらも法的に有効な遺言書です

 遺言書には複数の方式がありますが、公正証書遺言自筆証書遺言(法務局保管制度を利用したもの)も、いずれも民法上の要件を満たせば有効な遺言書として認められます。大切なのは「形式の不備がないこと」と「本人の意思が明確に表れていること」です。両者は有効性においては同列ですが、作成方法・費用・安全性の面で大きく異なります。どちらを選ぶかは、ご自身の状況と優先事項によって異なりますので、それぞれの特徴を正確に理解したうえで判断することが重要です。

公正証書遺言とは―最も確実性が高い方式

 公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が遺言者の意思を確認しながら作成する遺言書です。作成にあたっては、証人2名以上の立会いが法律上必要とされており(民法第969条)、遺言能力の有無や内容の明確性についても公証人が慎重にチェックします。このため、形式不備による無効や文面解釈をめぐるトラブルをほぼ防ぐことができます。

 また、原本は公証役場が長期保管します(遺言者の死亡後50年、証書作成後140年または遺言者の生後170年間――公証実務における取扱い)。全国公証人連合会のシステムで検索も可能なため、死後に遺言書が発見されないリスクもほぼゼロです。遺言者の死後、家庭裁判所での検認手続きも不要で、すみやかに相続手続きを進めることができます。

 費用面では、財産額に応じた公証人手数料(財産1,000万円以下の場合17,000円〜)のほか、証人費用・専門家報酬が別途かかります。費用はかかりますが、複雑な財産構成や相続人間の争いが懸念される場合には、確実性という点で最も優れた方式といえます。

自筆証書遺言+法務局保管制度とは―コストを抑えつつ安全性を確保

 自筆証書遺言は、遺言者が全文・日付・氏名を自書し、押印することで作成できる遺言書です(民法第968条)。2020年7月10日にスタートした法務局の保管制度を利用すれば、申請手数料3,900円で遺言書の原本を法務局に預けることができ、改ざん・紛失のリスクを防ぐとともに、家庭裁判所での検認手続きが不要になります(法務局における遺言書の保管等に関する法律第11条)。

 ただし、法務局の確認は「全文自書・日付・署名・押印の有無」といった外形的なチェックのみであり、遺言内容の有効性を保証するものではありません。遺言書に記載漏れや表現の曖昧さがあれば、遺留分トラブルや遺産分割協議が必要になるケースも生じます。費用を抑えたい方や、財産関係がシンプルな方にとっては有効な選択肢ですが、内容の作成は専門家への相談をおすすめします。

2つの方式の比較まとめ

 以下に両者の主な違いを整理します。

 公正証書遺言は、公証人による内容確認・法的チェックあり、証人2名以上が必要、費用は財産額により変動(公証人手数料+証人費用等)、原本は公証役場で長期保管(死亡後50年・証書作成後140年等)、検認不要。自筆証書遺言(法務局保管)は、全文を遺言者が自書する必要あり、証人不要、保管申請手数料は3,900円と低コスト、法務局が原本を死後50年・画像データを死後150年保管、検認不要。

 費用や手間を重視するなら法務局保管制度の活用が選択肢となりますが、内容の法的正確性・安全性・トラブル防止を最優先にするなら、公正証書遺言が依然として最も安心できる方式です。

迷ったときは専門家へご相談ください

 遺言書は、大切な財産と想いを次の世代に確実に伝えるための文書です。方式選択や内容の検討は、お早めに行政書士などの専門家にご相談されることをおすすめします。当事務所では、ご依頼者の状況に応じた遺言書作成のサポートを承っております。お気軽にお問い合わせください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。