2026年8月4日

自賠責への請求から支払までの流れ

 交通事故に遭った後、加害者側の任意保険会社を介さず、被害者が自分で自賠責保険へ請求する方法を被害者請求といいます。手続きは決まった順序で進むため、流れと必要書類を押さえておけば、決して難しいものではありません。ここでは被害者請求を前提に、請求から支払までの実務の流れを整理します。

1. 請求先を確認する

 被害者請求の窓口は、加害者が加入している自賠責保険会社です。保険会社名が分からない場合は、交通事故証明書の記載や、相手方への確認によって特定します。

2. 請求のタイミングを決める

 自賠責への請求は、すべての損害が確定してからでなければできない、というものではありません。治療が続いている途中であっても、限度額の範囲内で複数回に分けて請求することが可能です。傷害部分の限度額は120万円で、その枠内で治療費や休業損害などを順次請求していく形になります。

3. 基本となる書類をそろえる

 まず必要になるのは、次のような書類です。

 ・請求書類一式(保険会社所定の様式)
 ・交通事故証明書
 ・診断書、診療報酬明細書
 ・休業損害に関する資料(該当する場合)
 ・通院交通費の明細(該当する場合)

 事故の内容や請求する項目によって、必要書類は多少増減します。

4. 印鑑証明書と住民票の扱い

 被害者請求では、請求者本人が保険金を受け取ることの確認として、印鑑証明書の提出が原則として求められます。事前に取得しておくとよいでしょう。

 一方、住民票は常に必要というわけではありません。被害者が未成年で親権者が請求する場合や、家事従事者として休業損害を請求する場合などに、続柄や世帯構成の確認のため求められることがあります。つまり「誰が請求するか」「何を請求するか」によって要否が変わります。

5. 領収証が必要になる場面

 賠償金領収証は、示談が成立してすでに相手方から支払を受けている場合に提出するものです。示談前で領収証がないこと自体は、請求できない理由にはなりません。

 通院交通費については、交通手段によって扱いが分かれます。電車、バス、自家用車のガソリン代は、領収書の提出までは求められないことが一般的で、通院区間や距離をもとに算定されます。これに対して、タクシー代、有料道路の通行料、駐車場代については、領収書の提出を求められることが一般的です。特にタクシーは、利用の必要性が問われる場面もあるため、領収書は必ず保管しておきましょう。

6. 書類を提出し、審査を受ける

 書類がそろったら自賠責保険会社へ提出します。提出後に不足書類の追加を求められることも多く、一度で完璧にそろっていなくても手続きは進められます。提出された書類は保険会社から損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所へ送られ、事故状況や損害額の調査を経て支払額が決まります。

7. 支払までの期間と時効

 支払までの期間は、順調に進めばおおむね1か月から3か月程度が目安です。後遺障害が関係する場合は等級認定の手続きが入るため、さらに時間を要することがあります。支払額が確定すると、指定した口座へ振り込まれて手続きは完了です。

 なお、自賠責保険の請求権には3年の時効があります。傷害分は事故日、後遺障害分は症状固定日、死亡分は死亡日が起算点です。治療が長引くなどして期限内の請求が難しい場合は、時効更新の手続きがありますので、早めに保険会社へ相談してください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。