2026年8月6日

建設業許可業者が財務諸表を作成する意義

 建設業許可を受けた事業者は、毎事業年度が終了するごとに決算を行い、建設業法所定の様式による財務諸表を作成しなければなりません。これは事業年度終了後4か月以内に提出する「事業年度終了届(決算変更届)」の中核をなす書類であり、単なる提出物ではなく、建設業許可制度そのものを支える基礎資料です。

財務諸表は税務上の決算書とは別物

 注意したいのは、税理士が作成した確定申告用の決算書をそのまま提出できるわけではない点です。法人であれば貸借対照表(様式第15号)や損益計算書(様式第16号)など、個人事業主であれば様式第18号・第19号により、建設業会計の勘定科目に組み替えて作成します。売掛金は「完成工事未収入金」、買掛金は「工事未払金」と表記するなど、独自のルールが定められています。

公衆の閲覧に供される書類としての性格

 建設工事は工期が長く、請負金額も高額になりやすいという特性があります。そのため、工事の途中で資金繰りや経営上の問題が生じると、工事の中断や契約不履行など、発注者や社会に大きな影響を与えるおそれがあります。こうしたリスクを防ぐため、建設業法第13条は、許可行政庁が一定の書類を公衆の閲覧に供する閲覧所を設けることを定めており、財務諸表も原則としてその対象となっています。なお、個人情報を含む一部の書類は閲覧対象から除外されており、対象範囲の細部は許可行政庁によって取扱いが異なります。

発注者の判断材料としての役割

 財務諸表が公開されることで、発注者は、工事を最後まで安定して遂行できるか、過度な資金不足や経営不安がないかといった点を、事前に客観的に確認できます。これは公共工事だけでなく、民間工事においても、発注者が建設業者を適切に選択するための重要な判断材料となり、同時に発注者保護の仕組みとしての役割も果たしています。また、経営基盤の不安定な業者による無秩序な受注を防ぎ、建設業界全体の信用を維持するという意味も持っています。

大切なのは実態に即した継続性

 重要なのは、見栄えの良い数字を作ることではありません。実態に即した内容で、毎年継続して整合性の取れた財務諸表を作成することです。前期の期末残高と当期の期首残高が一致しない、工事経歴書に記載した金額と完成工事高が食い違うといった不整合は、審査の過程で問題となり、修正を求められる原因になります。

許可の維持と今後の手続きの前提として

 事業年度終了届が未提出のままでは、許可の更新や業種追加、経営事項審査の申請を進めることができません。未提出の状態が続けば、指導や監督処分の対象となるおそれもあります。建設業許可業者にとって財務諸表は、単なる義務書類ではなく、発注者の判断と業界の信頼を支える基礎資料であり、同時に自社の経営状態を毎年見つめ直す機会でもあるといえるでしょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。