2026年9月13日

遺言の目的は「書くこと」ではなく「実現すること」

任意後見・相続コラム 第18号

 遺言を残すと聞くと、遺言書を作成すること自体が目的だと思われがちです。しかし遺言の本当の目的は、死後にその内容が確実に実現されることにあります。どれほど丁寧に書かれた遺言書でも、実行されなければ意味を持ちません。

遺言書は「手段」であって「ゴール」ではない

 遺言書は、意思を伝えるための手段にすぎません。重要なのは、誰がどのように遺言を実行するのか、相続人が内容を理解し受け止められるか、実務上実行可能な内容になっているかという点です。

 実は民法も同じ考え方に立っています。2019年7月に施行された改正民法は、遺言執行者について「遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する」と定めました(民法1012条1項)。改正前にはなかったこの文言が、あえて条文に加えられたのです。

実現されない遺言が生む現実

 実務では、内容が不明確で相続人間の争いになる、財産の特定が曖昧で預貯金の解約や不動産の名義変更ができない、といったケースが少なくありません。遺言執行者の指定がなく、手続が滞ってしまう例もあります。

 もっとも、遺言執行者は必ず必要というわけではなく、指定がなくても相続人全員の協力で進められる場合はあります。ただし遺言による認知や推定相続人の廃除は遺言執行者でなければ行えず、指定がなければ家庭裁判所への選任申立てが必要となり、相応の時間を要します。

大切なのは「実現までを設計すること」

 遺言を残す際に本当に考えるべきなのは、この遺言は実際に実行できるかという視点です。遺言執行者を定めているか。財産と相続人が正確に整理されているか。遺留分に配慮した内容になっているか。手続の流れが想定されているか。

 保管方法も設計の一部です。自筆証書遺言は原則として家庭裁判所の検認が必要ですが、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用すれば検認は不要となり、相続開始後の手続を早めることができます。なお2026年6月には、押印の任意化や電子データで作成する「保管証書遺言」の創設を含む改正法が公布されましたが、いずれも施行日は未定で、現時点では現行のルールが適用されます。

遺言は、残された人のためのもの

 遺言は、自分の意思を主張するための文章ではありません。残された人が迷わず、速やかに行動できるようにするためのものです。だからこそ、内容の分かりやすさ、実行のしやすさ、実務との整合性が何より重要になります。

 遺言の目的は、遺言書を作ることではなく内容を実現することです。書いて終わりにせず、その後に何が起きるかまで考える。それが本当の意味での遺言の備えといえます。

 遺言書の内容が実際に実行できるものになっているか、不安を感じられた方は、お気軽にご相談ください。当事務所では、遺言書の起案支援、財産と相続人の整理、遺言執行者の就任まで一貫してお手伝いしています。なお、相続人間にすでに争いがある場合は弁護士、不動産の相続登記は司法書士、相続税の申告は税理士が扱う分野となりますので、必要に応じて適切な専門家をご案内いたします。愛知・岐阜・三重を中心に対応しており、初回のご相談は無料です。ご相談は、このページ内のお問い合わせフォームよりお気軽にお寄せください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。