2026年7月15日

自賠責保険の「限界」とは

交通事故に遭ったとき、多くの方が「まず自賠責保険が助けてくれる」と考えます。しかし、自賠責保険には明確な限界があります。その限界を知らないままでは、必要な補償を受けられずに終わってしまうケースもあります。ここでは、自賠責保険がどこまで補償し、どこから先が対象外になるのかを整理します。

「最低限度の補償」を目的とした制度

自賠責保険は、被害者救済のための最低限の補償制度であり、支払限度額は高くありません。傷害事故は120万円まで、後遺障害は等級に応じて75万〜4,000万円、死亡事故は3,000万円までとされています。重大事故になるほど、自賠責だけでは不足する場面が増えます。

治療費・休業損害は上限に達しやすい

通院が長期になると、120万円の枠はすぐに不足しがちです。むち打ちで通院が長引くケースや、整骨院と病院を併用するケース、収入が高く休業損害が大きくなるケースなどでは、上限に達しやすくなります。「まだ治っていないのに支払いが止まった」という相談は少なくありません。

重過失があると減額されることも

自賠責保険は被害者保護の観点から、原則として過失があっても減額されません。ただし被害者側に著しい落ち度がある場合には「重過失減額」が適用され、支払額が2〜5割程度減額されることがあります。

物損は補償の対象外

自賠責保険は人身事故のみを対象としており、車の修理代や代車費用、破損した持ち物などの物的損害は一切補償されません。この点は誤解されやすい限界のひとつです。

後遺障害の認定基準は厳しい

後遺障害は、書類や検査結果、症状固定のタイミングなどを踏まえて総合的に審査されます。痛みやしびれが続いていても、等級に該当しないケースは珍しくなく、認定されなければ慰謝料・逸失利益といった大きな補償を受けられないまま終わることもあります。

示談交渉や制度選択のサポートはない

自賠責保険は、手続きの助言や示談交渉、制度選択のサポートを行いません。被害者自身が判断する必要があるため、適切な進め方が分からないまま手続きが止まってしまう方も多く見られます。

まとめ:自賠責は「スタート地点」にすぎない

自賠責保険は、あくまでも事故直後の最低限の補償です。本当に必要な補償を得るためには、後遺障害等級の適切な申請や示談交渉、任意保険への切替調整など、専門的なサポートが欠かせません。事故後の対応は「どの制度を、どの順番で使うか」によって結果が大きく変わります。制度の限界を知っておくことは、それ自体が大きな備えになります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。