2026年7月20日

交通事故に健康保険は使えないのか?

 交通事故の治療では「健康保険は使えない」と言われることがよくあります。しかし実際には、一定の条件を満たせば健康保険を利用できるケースがあります。さらに、事故の状況によっては労災保険が優先されることもあります。ここでは、交通事故における保険の使い分けを、誤解の多いポイントに絞って整理します。

交通事故でも健康保険を使えるケースがある

 交通事故によるケガは「第三者行為による傷病」として扱われますが、次の手続きを行うことで健康保険を利用できます。

 ・加入している健康保険の保険者へ「第三者行為による傷病届」を提出する
 ・受診する医療機関が保険診療としての受け付けに同意している

 健康保険を利用した場合の窓口負担は、原則として1〜3割です。自由診療に比べて、患者本人の費用負担を大幅に抑えられる点が特徴です。

健康保険が「使えない」と言われる理由

 健康保険が使えないと誤解される背景には、主に次のような事情があります。

 交通事故では、自由診療のほうが医療機関の請求額が高くなりやすいため、医療機関側が自由診療での受診を案内するケースがあります。また、第三者行為による傷病届の提出など一定の手続きが必要になることから、手間を避けたいという事情で「使えない」と伝えられることもあります。

健康保険を使うメリット

 健康保険を利用して治療を受けることには、次のようなメリットがあります。

 ・治療費に対する自己負担を軽減できる
 ・診療報酬の基準が明確なため、過剰な請求が生じにくい
 ・治療費の総額を把握しやすく、その後の示談交渉を進めやすい

 費用面と、その後の交渉を見据えた観点の両方から、健康保険を利用するメリットは大きいといえます。

仕事中・通勤中の事故は労災保険が優先される

 交通事故であっても、次のような状況で発生した場合は、健康保険ではなく労災保険が優先して適用されます。

 ・業務中の移動や作業中に起きた事故
 ・会社の指示による外出中に起きた事故
 ・通勤途中(自宅と会社の往復経路上)に起きた事故

 労災保険が適用される場合、業務災害では治療費の自己負担は原則としてありません。一方、通勤災害では、原則として一部負担金(200円程度)が生じる点に留意が必要です。また、休業により働けない場合には、業務災害では「休業補償給付」、通勤災害では「休業給付」が支給されることがあります。

どちらの保険を使うべきかの判断基準

 ・仕事中や通勤中の事故 → 労災保険の適用が優先される
 ・私的な外出中の事故 → 健康保険を利用する(第三者行為による傷病届の提出が必要)

 どちらの制度が適用されるかは、事故発生時の状況によって判断が分かれることがあるため、迷った場合は早い段階で専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

 交通事故の治療では「健康保険は使えない」といわれることがありますが、実際には、状況に応じて健康保険を利用できるケースと、労災保険が優先されるケースがあります。仕事中や通勤中の事故では労災保険が優先して適用されるため、どちらの制度が適切かを早い段階で把握しておくことが大切です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。