2026年9月17日

交通事故の自賠責請求で押さえておきたい心構え

交通事故被害者請求コラム 第20号

 交通事故の被害に遭われた方が利用できる制度の一つに、自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)への請求があります。もっとも、自賠責請求は「事故に遭った=当然に保険金が支払われる」という仕組みではありません。手続をスムーズに進め、不要な行き違いを避けるために、あらかじめ知っておきたい考え方を整理します。

1.自賠責の対象は「人身損害」に限られる

 自賠責保険が対象とするのは、自動車の運行によって人の生命または身体が害された場合の損害です。治療費、休業損害、慰謝料、後遺障害や死亡に関する損害などが含まれます。一方で、車両の修理費や積荷の破損といった物損は対象外です。まずは、ご自身の損害が自賠責の対象に含まれるかどうかを切り分けて考えることが出発点になります。

2.被害に遭った事実と、支払の判断は別に行われる

 自賠責の保険金は、国が定める支払基準に沿って審査されます。事故の状況、医師の診断内容、事故と傷病との因果関係などを踏まえて、支払の可否と範囲が判断される仕組みです。また、傷害部分の支払限度額は被害者一名につき120万円とされており、これを超える部分は任意保険や加害者本人への請求によることになります。「被害者だから当然に全額が支払われる」のではなく、一定の基準に基づく評価を経るという前提を理解しておくことが大切です。

3.感情ではなく、事実を時系列で整理する

 事故の後は、不安や怒りといった感情が強くなりがちです。しかし請求手続で重視されるのは、いつ・どこで・どのような事故が起きたか、どの医療機関でどのような治療を受けたか、通院の頻度や治療期間はどうかといった客観的な事実です。主観的な思いを訴えるよりも、事実を時系列で整理する姿勢が、結果として請求を円滑にします。

4.「保険会社がすべて対応してくれる」とは限らない

 実務では、加害者側の任意保険会社が窓口となり、自賠責分を含めて治療費を支払う「一括対応」が行われることがあります。ただし、これは法律上の義務ではなく、あくまで保険会社の運用による進め方にすぎません。被害者自身が自賠責保険会社へ直接請求する被害者請求という方法もあり、その場合は必要書類をご自身で整える必要があります。請求方法の違いを最低限把握しておくことが、後のトラブル防止につながります。

5.「早く終わらせたい」だけで判断しない

 早く支払ってほしい、手続を簡単に済ませたいという気持ちから、内容を十分に確認しないまま進めてしまう例は少なくありません。しかし、請求内容が適切か、治療が継続中ではないか、今後の請求に影響しないかを確認せずに進めると、後から修正することが難しくなる場合があります。焦らず、一つずつ確認する姿勢が重要です。

6.分からない点は早めに整理する

 自賠責請求は、多くの方にとって初めて経験する手続です。書類の意味が分からない、この進め方でよいのか不安がある、説明を求められたが対応できない。こうした場合に大切なのは、分からないまま進めないことです。なお、自賠責保険への請求権には3年の時効があり、放置は不利益につながります。早い段階で疑問点を整理しておくことで、手続全体が落ち着いて進みます。

まとめ

 自賠責請求では、対象は人身損害に限られること、被害の事実と支払の判断は別であること、感情ではなく事実を整理すること。この三点を意識するだけでも、請求時の混乱や行き違いを防ぎやすくなります。自賠責請求は、冷静に、正確に進めることが何より重要です。

 自賠責保険への被害者請求をお考えの方、必要書類の準備や進め方に不安をお持ちの方は、このページ内のお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。当事務所では、被害者請求に必要な書類の作成・収集や、事故状況・治療経過の整理をお手伝いしております(なお、相手方との示談交渉の代理は弁護士の業務であり、行政書士がお受けすることはできません)。愛知・岐阜・三重を中心に対応しており、初回のご相談は無料です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。