2026年8月1日

電気工事業・消防施設工事業は実務経験だけでは許可が取れない

 建設業許可の技術者要件は、原則として「実務経験」または「国家資格」のいずれかで満たすことができます。ところが建設業29業種のうち、電気工事業消防施設工事業の2業種だけは、無資格での実務経験が原則として認められません。なお、従来「専任技術者」と呼ばれてきた役割は、令和6年12月13日施行の改正建設業法により「営業所技術者」へ名称が変更されています。

1.なぜこの2業種だけが例外なのか

 理由は建設業法ではなく、電気工事士法および消防法にあります。これらの工事は、そもそも免状を持たない者が従事できない仕組みになっており、無資格で積んだ経験は「適法な実務経験」として評価されないためです。感電・火災・人命に直結する分野であり、資格による技術水準の担保が前提とされています。逆にいえば、免状交付後に有資格者として従事した期間であれば、実務経験として算入されます。

2.電気工事業で認められる主な資格

 電気工事業の営業所技術者となれるのは、次の資格保有者です。資格によっては、取得後に一定の実務経験が求められます。

 第一種電気工事士/追加要件なし
 第二種電気工事士/免状交付後3年以上の実務経験
 電気主任技術者(第1種~第3種)/免状交付後5年以上の実務経験
 1級・2級電気工事施工管理技士/追加要件なし(2級は種別「電気」)
 技術士(電気電子・総合技術監理)/追加要件なし

 なお電気工事業は指定建設業に含まれるため、特定建設業許可では1級資格者等が必須であり、実務経験による代替はできません。

3.消防施設工事業で認められる資格

 消防施設工事業で認められるのは、甲種消防設備士・乙種消防設備士のみです。電気工事業とは異なり、技術士や施工管理技士では要件を満たしません。火災報知設備やスプリンクラー、消火設備は、設計・施工・点検のいずれにも高い専門性が求められるためです。さらに特定建設業許可を目指す場合は、消防設備士の資格に加えて2年以上の指導監督的実務経験が必要となります。

4.現場で多い誤解と注意点

 実務相談で特に多いのが、「有資格者を雇えばすぐ許可が取れる」という誤解です。実際には、資格の種類や区分だけでなく、常勤性・雇用関係・営業所での実態まで細かく確認されます。また、他業種の実務経験を合算して要件を満たすことはできません。少額な工事の経験の取扱いなど、許可行政庁によって判断が分かれる部分もあるため、事前確認が欠かせません。

5.重要なのは「経験の長さ」より「要件整理」

 この2業種では、実績の長さよりも要件整理の精度が結果を左右します。本当に必要な資格は何か、その資格者を営業所技術者として配置できるか、常勤性や雇用実態と整合しているか。ここが整理できていなければ、どれだけ実績があっても申請は進みません。

まとめ

 電気工事業・消防施設工事業は、無資格での実務経験が原則として認められず、法定資格を前提とした技術者要件が課されています。「経験があるから大丈夫」という判断は禁物です。申請前の要件整理を誤ると、時間もコストも大きく失うことになります。取得をご検討の際は、資格者の在籍状況を含めて早めにご相談ください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。